公益財団法人 自然エネルギー財団コメント
「自然エネルギーの可能性をおさえ込む接続制限は時代にそぐわない」 2015年12月18日

経済産業省は、12月16日に、北海道電力と東北電力の2社を指定電気事業者に指定し告示した。
(平成27年12月16日付経済産業省告示第263号。告示当日から施行)。これにより従来の太陽光発電に加え、風力発電についても「30日等出力制御枠」(接続可能量)を超過した分の申込みは、年間720時間(年間30日)という上限を超えた出力抑制に無補償で応じなければならなくなった。

この決定は、本年11月10日に開催された「総合資源エネルギー調査会省エネルギー・新エネルギー分科会新エネルギー小委員会系統ワーキンググループ(以下「系統WG」)」で、電力各社が内部で評価した太陽光発電および風力発電の接続可能量が報告され、同WGで了承されたことを踏まえた措置としているが、その算定のあり方には多くの問題点が含まれている。

1. 指定電気事業者への指定(無補償・無制限の出力抑制の可能性)による影響
接続可能量を超過した分の接続に対して「無補償・無制限」の出力抑制を課すことは、発電事業の予見性や金融機関からの融資の可能性を著しく低下させる。そのため、事業開始への高いハードルができてしまい、事実上の接続拒否にあたる。特に風力発電は、環境影響評価の実施などがあり、計画から運転開始までの期間が5年から10年と長いために、固定価格買取制度以降に事業開始した事業は少なく、そのほとんどが、制度開始以前に計画されていたものである。北海道・東北は風力のポテンシャルが豊富で、今後事業開始を計画している事業者も多いために、この事実上の接続拒否による影響は膨大である。

2. 電力会社が算定した接続可能量の妥当性検証の必要性
電力各社が算定した太陽光・風力の接続可能量は、将来的な原子力発電の最大限の稼働を前提としている。将来にわたり、再稼動か未稼動か、廃炉か運転延長か、完成か建設中止かも分からないまま、送電網を使える容量が最大限確保されているのである。この他にも、1.地域間連系線がほとんど活用されていない、2.太陽光・風力の発電出力想定が過大に見積もられている(2σ方式)、3.料金値上げ等の影響で減少している電力需要に対し自社の供給力を優先的に充当している(特に北海道電力は原子力・石炭火力が供給力の多くを占めており、過去の電源開発のあり方が問われる)、といった問題点がある。

3. 系統運用改善による制約解消の可能性を追及すべき
すでに欧州では、自然エネルギーの優先的な接続・給電を担保しながら、大規模な太陽光や風力の導入を行っており、他の国との連系があまりなくとも、これら変動型自然ネルギー電源の割合が3割以上に達している国もある。これらの国々は、限りなくゼロに近い出力抑制割合を実現しており、日本でも、系統運用の改善によって、充分これらの国に追いつくことができる。

4. エネルギー基本計画や電力システム改革との整合性をとるべきである
2014年4月のエネルギー基本計画では「再生可能エネルギーの導入加速化」「原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」としている。また2013年2月の電力システム改革専門委員会報告書では「小売全面自由化に併せ、卸電力市場の活性化、送配電部門の一層の中立化や地域間連系線等の強化・運用見直しを進めることで、小売市場で活発な競争が行われ、効率化が図られる環境を整備していく」としている。接続可能量の設定や無補償・無制限の出力抑制という措置はこれらの方針と整合性がない。

これまでのものも含め、指定電気事業者への指定による影響を把握するとともに、電力各社が算定している「30日等出力制御枠」(接続可能量)の妥当性検証を複数の第三者機関等を交えて早期に実施すべきである。小売全面自由化後を見据えた系統運用の改善を図り、将来の低炭素社会実現に向けて自然エネルギー導入拡大を最大限進めるべきである。

(了)
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