自然エネルギー財団プレスリリース
自然エネルギーの持続的な普及に向けた政策提案2014 2014年12月19日

 固定価格買取制度が開始されてから2年あまりが経過した。この間に、普及効果の面、コストの面、系統連系といったさまざまな点において自然エネルギーをめぐる状況は大きく変わっている。
 財団では、2014年8月に「固定価格買取制度2年の成果と自然エネルギー政策の課題」と題したディスカッションペーパーを発表したが、今回の提案では、自然エネルギーの普及動向やコスト動向についても最新の情報を加えてアップデートしている。さらに、ディスカッションペーパーにおいて、課題としたもののうち一部を取り上げて、さらに個々の課題について新たに得られた情報を踏まえながら、さらに深掘した分析を行い、その課題解決の方向性を示している。
 また、本提言の公表直前に、資源エネルギー庁が新エネルギー小委員会での検討を踏まえた固定価格買取制度の運用見直し案を定めている。本提言では、可能な限り資源エネルギー庁案に関する重要な論点についても扱うように努めた。

資料 自然エネルギーの持続的な普及に向けた政策提案2014 (1.4MB) 全25頁

※提言書の一部において、誤りがありましたので訂正いたします。
なお、現在、本サイトに掲載されているものは訂正済みのものです(2015年1月19日)。

・本文の該当箇所:7ページ表1の火力燃料費削減効果の値

以上


要約

○固定価格買取制度開始後の自然エネルギー電力の普及は、年率で580万kWに達しており、過去に導入されたRPS等の制度の10倍以上に及ぶ導入効果があった。また、国内の電力量に占める自然エネルギーの割合は、年に1%を超えて増加している。

○太陽光の販売・施工業者に対して財団が2014年10月~11月に行ったアンケート調査に基づいて以下のことが明らかになった。

①普及に伴い、市場が活発化した結果、競争と技術進歩の進展および急速なコスト低減が観察されており、FITが自然エネルギー市場の活性化とコスト低減に寄与している。

②一方で、多くの事業者は今後の市場展望について「縮小する」とみており、「政府の導入目標の不透明性」を事業リスクと考えている。
 このアンケート結果は、事業者の投資意欲を継続させていくためには、自然エネルギー普及の意欲的な長期目標値の設定が極めて重要であることを示している。

○FIT制度の安定的運用も非常に重要な課題であり、本提言では、現行のFITが、コストと買取価格とのかい離が起きやすい構造になっていることを明らかにし、改善の方向性を示した。

○2014年9月以降に各電力会社から発表された「接続回答保留」に対して、新エネルギー小委員会系統ワーキンググループで各電力会社における接続可能量の検討が行われた。しかし、この検討にはいくつかの重大な問題があり、自然エネルギーの接続可能量を過小評価する結果となっている。

 ①「エネルギー基本計画」においては、「原発依存度を可能な限り低減する」という基本方針を定めているが、今回の算定は、まもなく運転期間が40年に達する原発も含めてすべての原発が稼働するという前提に立って算定している。その結果、電力の最低負荷時の需要に対し、北海道電力や九州電力などでは供給の5割~6割を原発が占めるという結果になり、その分、自然エネルギーの接続可能量を小さくしている。

 ②地域間連系線については、運用容量のわずか5~16%しか活用されないという算定になっており、全国的な系統の活用により自然エネルギー電力を拡大する可能性が算入されていない。

 ③需給バランスのシミュレーションにおいても、国際的に推奨されている、過去数年の実際の電力需要と風力・太陽光発電の実績値の同時刻時系列データを用いておらず、信頼性の乏しいものとなっている。

○資源エネルギー庁がとりまとめた太陽光発電・風力発電に対する出力制御ルールの変更案は、需給バランス維持のために本当に必要な場合に、機動的に出力制御することを可能にする遠隔出力制御システムの導入など、積極的な要素がある。

○しかし、無補償で無制限な出力抑制を行うことができる「指定電気事業者制度」の適用拡大は、事業採算性の見通しを不明確にし、ファイナンスを困難にするなど、自然エネルギーの拡大の大きな障害になる恐れがある。この制度を適用するのであれば、以下のような措置が、最低限、必要である。

①独立性と透明性を確保した接続可能量の算定手法とプロセスを定めること。
②諸外国で行われているように出力抑制に対する補償制度を導入し、事業採算性の見通しを損なわないようにすること。
③恣意的な制度運用を防ぐための公表と検証の仕組みを導入すること。


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