連載コラム 自然エネルギー活用レポート

風力発電1000基に向けて第1弾が稼働
―秋田県・男鹿市の沿岸部にある県有地に―
No.5〈概要版〉

2017年8月10日 北風亮 自然エネルギー財団 上級研究員

 秋田市から男鹿(おが)半島にかけての海岸線一帯には防風林が広がり、ほとんどが県有地となっている。県は風力発電の適地でもある県有地の公募を実施し、100%地域資本の「株式会社風の王国」を事業者として選定。地元の企業や金融機関の協力を得て、2016年11月に「風の王国・男鹿風力発電所」が運転を開始した。プロジェクトを主導したのは地域の将来を見据えた構想を描く山本久博氏である。

沿岸部に風車1000基の壮大な構想

 「株式会社風の王国」の代表取締役を務める山本氏は長年にわたり秋田の環境市民活動の中心的存在であり、自然エネルギーの普及にも1990年代から携わってきた。その山本氏を中心とする地元の有志が集まり、2008年7月に「風の王国プロジェクト」が立ち上がった。同プロジェクトは秋田を風力発電の一大拠点にすべく、日本海の沿岸部と大潟村に合計1000基の風車を建設するという壮大な構想である。


写真1 「風の王国プロジェクト」の構想イメージ。出典:風の王国プロジェクト

 県も風力発電の導入を積極的に推進している。震災後の2011年5月に策定した「秋田県新エネルギー産業戦略」の中で、自然エネルギーの導入による産業振興と雇用創出を掲げた。特に風力発電に関しては、2015年度末に27万7000kW(キロワット)だった導入量を10年後の2025年度末には3倍の81万5000kWに拡大する目標を設定して、事業者を支援する方針だ。

 導入促進策の一環として、海岸線に広がる県有地を対象に、2012年5月に風力発電の事業者を公募した。最初に対象に選んだ場所は、男鹿半島の船越地区にある65ヘクタールの県有地である。公募を通じて「株式会社風の王国」が事業者に選ばれて、2012年6月にプロジェクトが動き出す。約1年半の工期を経て、「風の王国・男鹿風力発電所」が2016年11月に運転を開始した(写真2)。


写真2 県有地に建つ「風の王国・男鹿風力発電所」の風車群

 風の王国・男鹿風力発電所は、太陽光発電と蓄電池を併設する複合発電所である。大型の蓄電池を活用し、特別高圧の電力系統に接続する風力発電と太陽光発電の出力変動緩和運転を実施している。

地域主導のプロジェクト3原則を貫く

 年間の発電電力量は1649万kWh(キロワット時)を想定している。発電した電力は全量を固定価格買取制度で東北電力に売電する。出力が20kW以上の風力発電の売電単価は1kWhあたり22円で、売電収入は年間で3.6億円になる。運転維持費用は年間に0.7億円程度を見込んでいて、15年で投資を回収できる予定である。

 一帯の風況は冬季と夏季を中心に大きく異なる。冬には日本海から強い季節風が吹くのに対して、夏には風が弱まる傾向がある。このため冬季と夏季では発電量が2倍近い差になる。2016年11月の運転開始から半年あまりの実績を見ると、月ごとの発電量は想定した計画値に対して未達の月もある。ただし直近の2か月(2017年4月、5月)の実績では計画値を上回って売電量が増えている。

 風の王国・男鹿風力発電所は、秋田県の沿岸部に1000基を設置する構想の第一歩である。風の王国プロジェクトが掲げる3つの原則に沿って、「地域資本100%の事業主体」、「地元企業による意思決定」、「事業用地、金融、建設といった面でも地域が深く関与」という地域主導による実施体制を貫いて推進した。

 その背景には、山本氏の呼びかけに賛同して風力発電事業に踏み出した地元企業、そして風力発電の導入に積極的な県や地域金融機関の後押しがあった。事業化の経緯、建設時の状況や発電設備の詳細、今後の展開を含めて、現地の状況をレポートにまとめた。

レポート全文 自然エネルギー活用レポート No.5
風力発電1000基に向けて第1弾が稼働
―秋田県・男鹿市の沿岸部にある県有地に― (1.9MB)