「接続保留問題」を克服し、自然エネルギーを日本の基幹電源に 2014年10月3日

電力会社は十分な説明責任を果たすべき

 九州電力に続き合計5つの電力会社が、自然エネルギー接続申込みへの「回答保留」などの措置を表明した。各電力会社はその理由として、接続される太陽光発電などの合計量が、最小需要量を上回り、需給バランスが崩れるという説明をしている。
 しかし、政府の「電力需給検証小委員会」の資料からも、電力会社の示している接続合計量が実際の発電量と大きく異なることは明らかである(注1)。また、大量の認定設備が実際に発電を開始するまでには、数年単位の期間を要すると考えられる。
 さらに、気象に関係なく安定的に発電する地熱発電やバイオマス発電まで、一括して「回答保留」扱いとし、出力調整などの提案を求めるのも不可解である。電力会社が自社所有の火力発電などの稼働を優先することがあるとすれば、電力系統の利用の公平性を損なうことになる。
 必要なデータの公表もないまま、地域と事業者に多大な影響を与える措置を突如開始するのは、十分な説明責任を果たしているとは到底言えない。
 一方、国は、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」において、円滑な接続のために必要な場合には、電気事業者に対し指導及び助言をできる立場にある。国は、今回の電力会社の措置を事前に承知していたのか、どのような対応をしてきたのか、国民に対する明確な説明が求められる。

自然エネルギーの本格活用に向けた準備の遅れが根本の原因

 九州電力などは、今後、「揚水運転の実施や地域間連系線の活用」などを検討するとしており、国も新たに設置する「系統ワーキンググループ」で、調整電源の更なる活用、発電出力予測の活用、需要対策なども含め、接続可能量の拡大について検討を行うとしている。
 これらの措置が検討されるべきことは当然だが、自然エネルギーの導入に積極的に取り組んできた欧米の国や地域では、ずっと以前からこうした措置を既に実施し、年間総発電量の20%から30%という自然エネルギー(注2)を電力系統の中に取り込みながら、なおかつ安定的な電力供給を実現してきた。
 今回の事態の背景には固定価格買取制度の運用のあり方に起因する点もあるが、より本質的には、国と電力会社が、自然エネルギーを国の基幹電源にするための取組を行ってこなかった点にこそ、根本的な原因がある。

自然エネルギーを基幹電源とする契機へ

 現在、日本の電力供給の大半は、海外から輸入する化石燃料に依存している。原子力発電については様々な意見があるが、今後、福島原発事故前のような割合を占めることはない。
 海外からの化石燃料に大きく依存する事態を続ければ、経済への影響は大きく、エネルギー安全保障上も懸念がある。また、国際的に気候変動対策の枠組みが強化される中で、二酸化炭素の排出削減が日本にもいっそう強く求められることは確実である。
 こうした状況を踏まえれば、自然エネルギーを一刻も早く基幹電源のひとつに成長させることは、必須の、喫緊の課題である。今回の事態は、日本に自然エネルギーの大きなポテンシャルがあることを示したものともいえる。日本における自然エネルギー本格活用に向け、以下の取組を行うべきと考える。


1 電力系統の公平な運用を実現する仕組みを確立する

 今回の事態は、自然エネルギーの導入拡大にとっての系統接続の重要性を浮き彫りにしただけでなく、電力系統の公平な運用の大切さも改めて明らかにした。電力制度改革による発送電分離を待たず、電力系統の運用を電力会社まかせではなく、国や広域的運用推進機関、独立的な規制機関が関与する仕組みづくりを急ぐことが必要である。

2 系統運用技術を先進事例に学び、自然エネルギーを本格利用できる体制を整備する

 自然エネルギー設備も含めた発電所への給電指令システムの整備、気象情報を用いた発電予測システムの活用、自然エネルギーの出力調整や調整電源のスケジューリング、地域間連系線の積極活用、広域的需給調整の導入など、日本が欧米の先進事例から学ぶべきことは多い。系統運用技術の立ち遅れを克服し、日本でも自然エネルギーの本格利用を可能とする措置を早急に導入すべきである。

3 「系統ワーキンググループ」の公開

 新たに設置される「系統ワーキンググループ」の検討は、当然のことながら公開で行い、海外の先駆的な国や地域の専門家の意見を直接聞くなど、電力会社の狭い利益にとらわれない議論が行われるよう、国はリーダーシップを発揮すべきである。

4 系統運用に関する情報公開を直ちに進める

 ドイツでも、イギリスでも、フランスでも、スペインでも、系統を流れる電力量や、火力発電や自然エネルギー等の発電量をほとんどリアルタイムで誰もが知ることができる。米国でも、カリフォルニアなどでは同様の情報が提供されている(注3)。これに対し、日本では、これらのデータは全く公開されていない。系統運用の透明性を確保する第一歩として、こうしたデータの公開を直ちに行うべきである。

5 自然エネの導入目標を高く設定し、実現にむけた総合的な取組を進める

 欧州では、スペインが2020年に40%、ドイツが2030年に50%という目標を掲げ、米国でも例えばカリフォルニア州は2020年に33%という目標を掲げ、その実現を前提として、系統運用に何が必要かを検討している。日本においても、エネルギーの自給、気候変動対策などの観点から高い目標を掲げ、その実現を前提とした戦略の一環として、系統運用の改善を進めるべきである。その際、特に導入の遅れている風力発電の導入促進策を検討すべきである。


注1:総合資源エネルギー調査会 基本政策分科会 電力需給検証小委員会 第7回会合資料4「2014年度夏季需給検証について」では、太陽光発電の出力比率を九州電力で32%としている(最高は北陸電力の55%)。

注2:太陽光発電と風力発電という変動型自然エネルギーだけでみても、少なからぬ国において年間発電量で10数%から30数%の導入が実現されている(2013年)。
 デンマーク :33.7%、 ポルトガル :24.2%
 スペイン  :23.1%、 アイルランド:17.4%
 ドイツ   :13.1%(2014年前半では、16.0%)

注3:例えば、以下のサイトでリアルタイムの発電量が公開されている。
Germany and Austria by the European Energy Exchange;
http://www.transparency.eex.com/en/Statutory%20Publication%20Requirements%20of%20the%20Transmission%20System%20Operators/Power%20generation/Actual%20wind%20power%20generation

United Kingdom by Gridwatch (data courtesy of BM Reports);
http://www.gridwatch.templar.co.uk/

France by the French TSO Réseau de Transport d'Electricité;
http://www.rte-france.com/en/eco2mix/eco2mix-mix-energetique-en

Spain by the Spanish TSO Red Electrica de España;
https://demanda.ree.es/demandaEng.html

California by the Californian ISO (California Independent System Operator)
http://www.caiso.com/outlook/outlook.html

資料 「接続保留問題」を克服し、自然エネルギーを日本の基幹電源に (0.2MB)

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