報告書「エネルギー安全保障と電力貿易
アジア・スーパーグリッド構想における日本の安全保障への影響」

アジア・スーパーグリッド構想(ASG)は、エネルギーミックスにおける自然エネルギー比率の増加と、電力システム全体の効率的な運用を実現するための有力な手段の一つである。実際、欧州においてはノルウェーとオランダを結ぶNornedを始め既に多くの国家間連系線が存在し、自然エネルギー導入の拡大に貢献している。

一方、日本国内では海外と電力融通を行うことに対する安全保障上の懸念が根強くあり、実現に向けた大きな障害となっている。この安全保障上の懸念とは、海外に電力供給を依存すれば、外交的に緊張関係になった際に電力供給を武器(Energy weapon)として利用されるのではないかとする考えである。

本レポートは、ASGの欧州版とも言えるDesertec構想をケースとして実施された研究を参考に、電力の輸出国と輸入国における相互依存関係性(interdependence)について分析を行うものである。

分析結果より、電力融通を適正な規模に設定し、国内に十分な予備供給力と需要抑制手段を維持することで、万が一、ロシアからの電力供給が途絶するという最悪の事態を想定したとしてもその経済的影響は限定的なものに留まることが分かった。また、一般的な認識では、電力供給の途絶は電力輸入国側に一方的に損失を与えると考えられているが、他の代替輸入国が存在しない場合には輸出国側にも大きな損失を与え、双方にコストを発生させるものであることが分かった。さらに、輸出国側に発電・送電事業への投資参加を促すことによって、事業リスクを双方で共有することになり、より一層、相互依存関係性を高められる可能性がある点も明らかになった。

このような相互依存関係性が成り立つ国家間の電力融通においては、どちらかが一方的にバーゲニングパワーを持つことは無く、適切な事業設計を行うことによって輸入国側への安全保障への影響は限定的にすることが可能であることが示唆される。

資料 エネルギー安全保障と電力貿易
アジア・スーパーグリッド構想における日本の安全保障への影響 (539KB)


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